トサヤッコさんのメスが近くにいたはずなのに! 小笠原
- スズキ目キンチャクダイ科のトサヤッコさんはオスとメスでは見た目が全く違います・・・オスは下の写真の様に体側背部から中央付近にまで達する黒と白の横帯があって頭部から後方までのびる橙色~黄色のラインがあります・・・下顎から胸部にかけては若干青みがかかっていて腹部は淡色もしくはわずかに青みがかかっています・・・後ろ姿なのでよくわかりますが背鰭棘・軟条部や尾鰭に小さな橙色斑をもっていて結構メリハリのある派手な模様のトサヤッコさんです。

- 一方メスの体の色は背部が茶色味をおび腹部は淡色になっています・・・尾鰭上・下葉に黒色帯があり尾鰭基部付近に横帯があってオスとは違って若干地味な模様のトサヤッコさんです・・・鰓蓋中央部に淡色域があり前・後鰓蓋縁辺に黒色線をもっていてメスの個体をクマドリヤッコさんと呼んでいたようです・・・トサヤッコさんはメス⇒オスへと性転換するお魚さんとして知られており群れの中で一番大きな個体がオスになりハーレムを形成します・・・ということはこのオスの周りにはメスが群れていたということですね・・・見た目が違うので別種と思っていたのかもしれません・・・残念ながら全く気が付きませんでした。
ヒレナガヤッコさんのお嬢さんとキイロハギさんが井戸端会議!
- よく見るとチャイロヤッコさんの様な黒っぽい方もいらっしゃいますが目立っているのは黄色いスズキ目ニザダイ科ヒレナガハギ属のキイロハギさんと青いスズキ目キンチャクダイ科タテジマヤッコ属のヒレナガヤッコさんです・・・彼女たちは井戸端会議でもしているように見えますが・・・何の話題でしゃべっているのでしょうか?・・・旦那の悪口でしょうか?・・・ヒレナガヤッコさんは岩礁やサンゴ礁外縁の斜面の中層で見られ潮通しの良い場所を好むお魚さんなのですが生息水深は25m以深ということでやや深い所で暮らしています・・・でも小笠原ではそこまで深くなくても見れたような気がします・・・ヒレナガヤッコさんの体は楕円形で側扁していて頭部前縁は丸く口は小さくてやや上向きに開いていますがヒレナガヤッコさんのオスは身体の色は淡い青灰色で腹側は水色の地に黒色の縦帯が多数入っていて背側と腹側の境界後方には1本の黄色い縦帯があります・・・またヒレナガヤッコさんのオスの尾鰭の上・下葉はよく伸びていますがメスの様に尾鰭両葉は黒色になってなく腹鰭は白色になっています。

- ヒレナガヤッコさんのメスの体側は写真の様に淡い青灰色一色で左右の眼にかけての頭頂部に黒色の斑が複数あり尾鰭両葉は黒色になっています・・・ヒレナガヤッコさんのメスも綺麗なブルーなのですがオスほど派手ではなくヒレナガヤッコさんのおちびさんもメスとほぼ同じ色彩で頭頂部の黒色斑がまだシンプルなのです・・・ヒレナガヤッコさんは動物プランクトンなどを食べ数匹程度のハレムをつくって生活していますが雌性先熟の性転換を行います・・・これはタテジマヤッコ属のお魚さんの特徴の一つで群れの中のオスがいなくなったりすると体の大きいメスがオスへと性転換するのです・・・このような性転換をする群れの暮らしはハナダイさんの仲間やベラさんの仲間など他の魚でも見られます・・・先ほどヒレナガヤッコさん達が井戸端会議をしているのではと申し上げましたがもしかしたら次のオスを誰にするか会議をしていたのかもしれません・・・よく見たら確かに真剣な眼をしていますからね。

- 上の写真はキイロハギのおちびさんと仲良く同時にこちらの様子を伺っているのはヒレナガヤッコさんのオスです・・・ヒレナガヤッコさんは全長が15cm程度でオスは体色が鮮やかなブルーで腹部に数本の淡色と黒色の縦帯があり遠くから見ていてもよく目立つゼブラ柄ですがキイロハギのおちびさんと違って心配そうな表情をしています・・・もしかして先ほどのヒレナガヤッコさんのメスたちの井戸端会議を聞いてしまったのでしょうか?・・・「まだ僕元気だよ!次のオスの話はまだ早いんじゃないかな?」なんて心配しているのでしょうか?・・・それからヒレナガヤッコさんのオスは体側後方の淡色部と青色部の境界付近に一本の黄色縦帯がありますが不明瞭なことも多く下の写真でもわずかにわかりますかね?・・・それからヒレナガヤッコさんの尾鰭の上下葉はビヨーンと良く伸びていてこれが名前の由来なのでしょうが下の写真の左上に居るのがオスで右下のちょっとぼけて写っているのがメスです・・・ヒレナガヤッコさん達は動きが素早くなかなかじっとしてくれないのでピントを合わせるのが難しかったです・・・ヒレナガヤッコさんのオスはゼブラ柄でよく目立ちますがメスは控え目な模様でついつい見過ごしてしまいますがもう少しメスもお洒落に着飾ったらいいのにと思ってしまうのは私だけでしょうか?
あっしまた!見つかったかな?びっくり顔のレンテンヤッコさん!

- こちらを向いてびっくり顔の可愛いお魚さんはスズキ目キンチャクダイ科アブラヤッコ属のレンテンヤッコさんではないでしょうか?・・・目を丸くして口をポカンと開いて「あ!見つかった!怖い!どうしよう?」という感じの表情をしています・・・「大丈夫です!何も危害を加えませんから!でも写真だけ撮らせてくださいね」・・・レンテンヤッコさんの全長は最大20cm程度まで成長し日本で見られるアブラヤッコ属のお魚さんの中では最も大きくなりますがこの写真のレンテンヤッコさんはそこまで大きく成長してはいなかったです・・・アブラヤッコ属の中にどんな種類のお魚さんがいるかというとアブラヤッコさんはもちろんですがコガネヤッコさんやアカハラヤッコさん等がいてどのお魚さんも特徴的な綺麗な色をしています。

- レンテンヤッコさんの体色はオレンジ色で紫がかった青色の斑点があり尾鰭は黄色ですが斑点は尾に近いものほど大きくより紫色に近くなります・・・レンテンヤッコさんの幼魚は背鰭後部に青色の眼状斑がありますがこのレンテンヤッコさんにはもう眼状斑は無くなっていますね・・・レンテンヤッコさんのメスはオレンジ色が濃くオスは斑点の数がメスより多くなります・・・レンテンヤッコさんは雑食でサンゴのポリプや小型の甲殻類や藻類などを食べますがなんと他のお魚さんの糞まで食べるそうです・・・いくら何でも他のお魚さんの糞まで食べなくてもいいと思うのですがまあ食の好みは人それぞれですから私がどうこう言う筋合いではないですね・・・レンテンヤッコさんは水深20~30mの岩礁域で暮らしていますが一夫多妻制で12 cm程度に成長すると1か月くらいかけてメスからオスへ性転換するそうです。

- アブラヤッコ属に属するヤッコさんはほとんどが全長10cmに満たない小型種ですがレンテンヤッコさんはアブラヤッコ属の中ではかなりの大型種です・・・キンチャクダイ科は8属91種で構成されアブラヤッコ属・キンチャクダイ属・サザナミヤッコ属・シテンヤッコ属・シマヤッコ属・タテジマヤッコ属・ニシキヤッコ属・Holacanthus属があります・・・こんなにたくさんの仲間がいて種類も多くしかもよく似ているお魚さんが多いので「この子はいったいだあれ?」ということがよくあっていつも区別がつかず困っています・・・キンチャクダイ科のお魚さんは鮮やかで美しい体の色をもつ種類が多く一般には「ヤッコの仲間」として親しまれています。

- キンチャクダイ科のお魚さんはほとんどが水深20mより浅い海の岩礁やサンゴ礁の辺りで暮らしていて深い所にまで生活領域を広げている種類は稀ですが中には他人とは違う場所で孤独を楽しんでいる孤高の存在はいます・・・その事については悪いことではないと思います・・・何故ならいつも右に倣えだと何かあった時に仲間が全滅しかねないですからこれも生き抜いていくための知恵なのかもしれません・・・キンチャクダイ科のお魚さんの体の色は成長段階によって著しく変化し稚魚と成魚ではまったく異なる色彩・斑紋を呈することがしばしばありそんな時は本当にあなた達は親子なのと疑いたくなります・・・親子だと知らされてびっくりすることが多々あります・・・また性別による体の色の差が大きい種類が多いのもキンチャクダイ科のお魚さん達です・・・そんなことはないと思いますが親子であることが分からないキンチャクダイさんの親子もいたりして?

- キンチャクダイ科の多くは雌性先熟型の雌雄同体ですべての個体が当初はメスとして成長しある程度大きくなるとオスに性転換しますが1匹あるいは複数の大型のオスによってハーレムが形成されます・・・でも繁殖行動については詳細が明らかになっていない種類が多いそうです・・・キンチャクダイ科は著しく平べったい体型をもち一見してチョウチョウウオ科の仲間によく似ていますがキンチャクダイ科には前鰓蓋骨にチョウチョウウオ類にはない強いトゲがありまたオスにはこのトゲが2対あります・・・それからチョウチョウウオさんの仲間に見られる腹鰭の付け根のトゲや浮袋の突起をキンチャクダイ科はいずれも持っていません・・・キンチャクダイ科のお魚さんは連続した一つの背鰭をもち多くの種類では背鰭・臀鰭の中央から後方にかけての軟条が大きく発達していて後方に細長く突き出ることもあります。

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