各地のダイビングポイントで見かけた『ゴンベさん』達をまとめてみました。浅い海のサンゴ礁などで暮らすお魚さんで、肥厚した大きな胸びれで、サンゴなどの上にドカッと立ち、あたりをギョロギョロ伺っています。ゴンベという名前の由来になっている、背びれの棘の先端に小さな糸状突起があり、雌性成熟型の雌雄同体で、ほとんどの個体は最初に雌となり、後に雄へと性転換します・・・。ゴンベさんの仲間って、不思議なお魚さんですよね。
拘りが強いのか?いい事?悪い事?孤高の存在イレズミゴンベさん!!

- サンゴの上にドシンと鎮座して威厳を保っているのはスズキ目ゴンベ科ホシゴンベ属のイレズミゴンベさんです・・・イレズミゴンベさんはホシゴンベさんやメガネゴンベさんに似ていますが頭部には明瞭な斑紋がありません・・・それに体長は30cm近くなりますからイレズミゴンベさんは日本産のゴンベさんとしてはかなり大型のゴンベさんなのです・・・それにしてもイレズミゴンベさんには申し訳ないのですが他のゴンベさんの様な可愛さが私にはちょっと感じられません・・・何故なんでしょうか?・・・大きいから?色が地味だから?・・・でもイレズミゴンベさんは側面に白いワンポイントの斑点(イレズミ?)を施すなどお洒落には気を使っていますしよく見ると顔の表情も穏やかそうで少し可愛い感じがしてきました・・・如何でしょうか?

- 小笠原では私は写真のタイプしか見たことないのですがこのイレズミゴンベさんは体色が異なる二つの形態を持つことが知られています・・・一つは明るい体色に黒い斑点と白いラインがあるパターンともう一つは写真のイレズミゴンベさんの様に全身が濃い灰色に黒の斑点と一つの大きな白の斑点がある地味なパターンです・・・他の海ではあまり見かけないイレズミゴンベさんですが小笠原の海では結構見かけるので段々有難味が無くなってしまいます・・・このイレズミゴンベさんはお腹がすいているのでしょうか?・・・遠くを眺めながら何処かに美味しそうな獲物がいないかと目を皿にして辺りを伺っているのか?それともサンゴの上に鎮座した孤高の存在として何か思いに浸っているのでしょうか?・・・そう思うとちょっとイレズミゴンベさんがかっこよく見えてきました。

- イレズミゴンベさんは結構大型なので他のゴンベさんの様に「ゴンベちゃん」という可愛さは感じないですね・・・ゴンベさんというと小さいのに胸鰭でしっかりと大地を踏みしめて辺りに睨みをきかそうとしている可愛いイメージですがこのイレズミゴンベさんはどちらかというとハタさんの小ぶりといった感じでどっしりと辺りに本当に睨みをきかせています・・・下の写真のイレズミゴンベさんも「俺の縄張りを邪魔しているものがいないか?もしいたら咬みついてやるからな!」と鋭い視線で睨みをきかせています・・・イレズミゴンベさんは水深20m以浅のサンゴ礁に住んでいる底生性で体側中央付近に1対の白色斑がはいりますがどうしてポツンと身体の色と全く違う白色斑があるのかわかりません・・・この目立つ白斑斑がイレズミという名前が付いたいわれですかね?


- イレズミゴンベさんは小型の魚類や甲殻類を主な餌として食べていますがこれだけ身体が大きいと他のゴンベさんと違ってガツガツ食べそうですし歯も鋭そうな気がします・・・このイレズミゴンベさんは体色が異なる二つの形態を持つことが知られていますが日本では南西諸島と小笠原諸島などで見られこのふたパターンは全然見た目が違うのでかつてはそれぞれ別種とされていました・・・そうですよね!どう見ても同じ種類には見えませんから納得です・・・それにしても上の写真のイレズミゴンベさんは眼付が悪くていかにも狂暴そうですが下の写真の正面から見たイレズミゴンベさんはちょっととぼけた感じがあって愛嬌がありますね・・・胸鰭は他のゴンベさんと比べるとちょっと短いような気がしませんか?他のゴンベさんはもう少し長くてしっかりと岩の上で身体を支えています・・・このイレズミゴンベさんは身体がでかいから胸鰭が地面にとどかずお腹で岩の上に乗っかっているのでしょうか?

オキゴンベさんがサボテンしょってる!(改)柏島
- オキゴンベさんの体の高さはやや高めで何と言いますかいかり肩で立派な体?をしています・・・それと見ての通りゴンベ科の特徴でもあるのですが背びれの棘には数本の糸状突起があります・・・「どうや!すごいやろ!」と少し半開きの口が言っているようで顔つきも何となくドヤ顔に見えるオキゴンベさんです・・・よく見かけるサボテンみたいな見事な棘ですが体が鮮やかな黄色もしくはオレンジ色なのでイメージはパイナップルですかね?・・・オキゴンベさんの体側には不明瞭な暗色斑があって背びれや尾びれには斑紋がなく体長は10cmくらいの大きさです・・・ゴンベさんの英名は「ホークフィッシュ」と呼ばれていて鷹のようにサンゴや岩の上に留まってあたりを鋭い目つき?で見張っているところからきているそうです

- 確かに潜っているとよく岩の上で踏ん張っているところを見かけますよね・・・ゴンベさんには浮袋は無く遊泳性には欠けますが止まっている時は胸びれで体を支えているので胸びれは発達しています・・・しなやかなお魚さんというよりはちょっとマッチョな筋肉もりもりのゴンベさんです・・・ゴンベさんの名前はこの糸状突起を権兵衛(江戸時代後期から大正時代まで流行った幼児のヘアースタイルでぼんのくぼのところだけ剃り残した毛髪のこと)に見立てたことから来ているそうです・・・英名はかっこいいのですが和名はちょっとかわいいです・・・オキゴンベさんは雌性先熟の性転換魚で雄はハーレムを作り数尾の雌と暮らしています・・・群れの中で一番大きな個体が雄へと性転換するのですがオキゴンベさんは群れの都合に合わせて両方向の性転換もできる事が知られています・・・うらやましいというか?たいへんというか?忙しいというか?とにかくすごいですよね!!・・・両方向の性転換ができる種は他にオキナワベニハゼさんやダルマハゼさんやイチモンジハゼさんなどがいます。

- オキナワベニハゼさんはサンゴ礁域の礁斜面やドロップオフに生息していて水深3〜55mの崖壁の亀裂内やサンゴの根の壁面や天井などで単独で見られます・・・眼の下に4本の黄色ラインがあって体長はおよそ3.5〜4cmで体に黄色〜橙色の斑点が密在しています・・・ダルマハゼさんは頭に細かいひげ状の突起があるダルマハゼは頭部が淡褐色になっており体側や各ひれが暗色であることでクロダルマハゼやアカネダルマハゼと区別できます・・・ヨゴレダルマハゼは頭部のひげ状突起が長いことと眼周囲に細かい斑紋があることなどで見分けられます・・・イチモンジハゼさんは岩礁域の約20m以深に生息しており岩の表面や岩穴の奥などで単独で見られます・・・吻から眼を通り尾びれにかけて体側に黒色の縦帯が走っています。
恥ずかしがり屋さん?シニカル?ニヒル?唯一無二のクダゴンベさん!
- 小笠原の美しい海にエントリーして直ぐに見つけたのは枝サンゴさんの影に隠れている恥ずかしがり屋さんのスズキ目ゴンベ科クダゴンベ属のクダゴンベさんです・・・クダゴンベさんはクダゴンベ属を構成する唯一の種で最大でも全長13 cm程度にしかならない小型のお魚さんです・・・身体の色は白を基調としており体側に入る赤い格子状の模様が独特でまたその和名の通り管状に長く伸びた口吻も特徴です・・・クダゴンベさんの吻の長さは頭部の全長のほぼ二倍に相当するそうですがちょっと長すぎると思いませんか?・・・あまり長いと自分で口の先が見えなくて困るんじゃないでしょうか?・・・でもこの長い吻によって他のゴンベさん達とはっきりと区別ができますしそこがまた可愛らしいクダゴンベさんなのです。

- クダゴンベさんもゴンベ科の他種と同様に背鰭の棘部には数本の糸状皮弁がみられますが下の写真で何となくわかりますかね?・・・それから一見派手に見えるこのクダゴンベさんの格子状の赤と白の模様は枝サンゴの間に隠れる際に保護色としてはたらいていると考えられています・・・確かにダイバーが近づくとクダゴンベさんはすぐに枝サンゴの間に隠れてしまいますが枝サンゴの隙間に隠れられると「あれ?何処に行った?さっきまでそこに居たのに?」という事がよくあります・・・この枝サンゴさんはポリプをいっぱい開いて元気に生きていますがそんな枝サンゴさんに隠れながらクダゴンベさんはこの尖ったおちょぼ口で底生あるいは浮遊性の小型甲殻類を主に食べて生きています・・・たまに小型のお魚さんも食べることもあるそうです。

- クダゴンベさんは縄張りを持って行動をしておりウミトサカ類やヤギ類の群体の周りをチョコチョコと活発に動き回っていますがこの時も上の2枚の写真を撮った後で急にクダゴンベさんはシャシャシャシャと移動してしまいました・・・この移動したクダゴンベさんを目でずっと追いかけていたのですが5mほど下に降りたところでもう1匹のクダゴンベさんと一緒になりました・・・もしかしたらペアのクダゴンベさん達かな?と思ってシャッターを切ったのですがうまく色が出ませんでした・・・ストロボの光が岩に隠れて当たっていないのかな?といろいろ角度を変えてみたのですがやっぱりうまく光が当たりません・・・移動時間が来たので仕方なく諦めて移動したのですが泳ぎながらカメラを見てみるとストロボの配線が外れているではないですか!・・・なぜ気が付かなかったのか?と反省しながら「また来るからね!」とクダゴンベさんにサヨナラしました・・・その時の写真が下のクダゴンベさんですが「僕の綺麗な色が出てない!」とクダゴンベさんに怒られそうです。

- 唯一無二孤高の存在であるクダゴンベさんはその和名の通り管状に長く伸びたチャーミングな口で小型甲殻類を主に食べていますが小型のお魚さんを食べているところも観察されたことがあるそうです・・・でもそんなおちょぼ口で小型のお魚さんを食べれるんでしょうか?・・・クダゴンベさんの個体数はそれほど多くなく縄張りを持って斜面や岸壁に生えるウミトサカ類やヤギ類の群体の周りを活発に遊泳していますが臆病なのでダイバーが近づくとすぐに枝の間に隠れてしまいます・・・それからゴンベ科魚類には性転換を行なうものが多くいますがクダゴンベさんが性転換を行うかについては不明だそうです・・・ゴンベ科に属する魚は世界に30種以上が確認されており主にインド-太平洋の温帯~熱帯にかけての浅い海に生息していますが日本では現在のところ14種が確認されているそうです。

- ゴンベさんの仲間は背鰭の棘条先端に糸状の皮弁があることが大きな特徴でこれが江戸時代の権兵衛(子供の後頭部に剃り残された一束の毛)を連想させることが和名の由来と言われています・・・またゴンベさん達はサンゴや岩の上で長く立派な胸鰭でガッチリ体を支えて鷹のように辺りに睨みをきかせていることが特徴ですが確かにダイビングをしているといつも同じところで仁王立ちしているところをよく見かけますよね・・・下の写真のクダゴンベさんも立派な胸鰭で身体を支え「ここは俺の縄張りだぞ!」と言わんばかりに雄たけびを上げているようです・・・それから比較的よく見かけるゴンベさん達の特徴ですがまずオキゴンベさんです・・・オキゴンベさんは分布域はかなり広く最もよく出会うゴンベさんでオレンジ〜褐色の体に色の濃い部分が斑模様にはいっています・・・大きさは10cmほどで黄色い背鰭の先端は細かく枝分かれしていて好奇心が強く近寄ってもあまり逃げません。

- 次にホシゴンベさんですが全体的に黒っぽいものや赤味が強いものや黄色が濃いものなど色彩変異はあり顔に小さな斑点が多数あることが最大の特徴です・・・また黒色から暗色の縦帯が主に体の後方部にみられることもありますしホシゴンベさんの幼魚では顔に小さな斑点が少ないこともあります・・・メガネゴンベさんは目の後ろにU字型の模様がありこれが眼鏡をかけているように見えることが和名の由来です・・・メガネゴンベさんは赤や黒など個体によって色彩変異はありますがこのメガネ模様によって識別は簡単です・・・ベニゴンベさんは鮮やかな紅色に背鰭基部と目の後部に黒色線が入るのが特徴で派手な模様の割りにとてもシャイなので浅場のハナヤサイサンゴの仲間の枝の奥深くに潜んでいます。

- ウイゴンベさんはゴンベさんの仲間の中では珍しく遊泳性が強く海底から離れていることが多いので一見ハナダイさんぽく見えるかもしれません・・・ウイゴンベさんは赤みがかった体色で尾鰭がツバメの尾羽のような弓形になっており英名の「Swallowtail」の由来となっています・・・ウイゴンベさんは体よりも尾鰭が明るい色をしていて背鰭の先端に糸状皮弁が見られます・・・それからサラサゴンベさんは体色がやや赤みがかった白色で体側面には大きな赤い斑紋が横帯状に並び頭部にも眼を通る赤い縞が走ります・・・サラサゴンベさんの背鰭や尾鰭には小さな赤い斑点が散らばっておりヒメゴンベさんに姿がよく似ていますがヒメゴンベさんは眼下の斑紋が斑点状であることから判別ができます。

- スミツキゴンベさんは体の色が黒っぽい暗色から赤みを帯びたものまであって頭部には小さな白点があり体側には頭部のものよりも大きな白色斑があります・・・スミツキゴンベさんの尾柄部には大きな黒色斑がありますがこれが和名の由来になっています・・・イレズミゴンベさんは成長すると30cm以上となる大型種で全身に多数の小黒点があり黒っぽく体側中央に白い斑点が1つあります・・・ハナゴンベさんはなぜか名前にゴンベと付いていますがハナダイさんの仲間で他のハナダイさんのように活発に中層に泳ぎまわることはなく海底からあまり離れません・・・ハナゴンベさんの体は桃色で背部はやや黄色っぽく眼の下からやや後方にのびる2本の黄色線があります。

- クダゴンベさんが派手な衣装でヤギ類の中からニュウっと出てきましたが格子状に交差した派手な模様は枝サンゴの間に隠れる際に保護色としてはたらいていると考えられています・・・それにしてもクダゴンベさんはどうしてこんなに唇を尖らしているのでしょうか?・・・昔昔クダゴンベさんの祖先がどうしても唇を尖らせなくてはいけないようなつらい出来事に出会ってしまったからなのでしょうか?・・・まあ冗談はさておきこの尖った長い口が他のゴンベ科の仲間と区別できる特徴なのですがいつもシニカルそうに感じるのはこの文句言いたげな口の形だからなのでしょうか?・・・それからクダゴンベさんが気持ちよく浮遊している姿を私は見たことがありませんがもしかしたらクダゴンベさんは泳ぎが嫌いなのでしょうか?

- クダゴンベさんの名前は背鰭の先端の小さな糸状の突起が昔の幼児の髪型に似ているため『ゴンべ』と名付けられていて『クダ』に関しては口の部分が管のように前に出ていることが由来しているそうです・・・クダゴンベさんもご多分に漏れず岩場やサンゴさんの上でよく辺りを伺っていますがクダゴンベさんは温和なのか根性が座っているのか至近距離まで近づいてもあまり逃げ出さないゴンベさんです・・・写真のように胸びれをドシっと立てて「何か俺様に用か!」とこちらを睨んでいますがもちろんあまり近づきすぎると逃げてしまいます・・・ちなみにゴンベ科は胸鰭の下部軟条が肥厚し長くなっていてタカノハダイさんの仲間に似ています。

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